村づくりを考える

 村づくりと聞くと「創生」「活性化」「イノベーション」のようなイメージをお持ちだと思います。しかし、実際には「維持」が重要で不可欠です。維持をするには現状の問題点や村民目線での視点が必要になるためです。

 私たち一般社団法人阿武隈クラブIITATEでは、地域包括ケアを目的とした活動を続けています。当法人の副理事が村内で整骨院を営んでいて、常務は介護福祉士の資格を擁している関係もあり、持っているスキルは積極的に使おうという考えから公衆衛生の一助となる活動をしています。村内の医師、訪問看護ステーション、看護師、県外から来ていただいている多くの関係者の方々と協力し、成り立っています。

 村づくりの一面には現場目線が必要です。高齢化は村の活動量を大きく低下させますし、農地の多い中山間地域においては、山の保全、道路の補修、農地の管理等、村を維持をするための作業は多岐にわたります。また、中山間の役割は多面的であり、害獣、害虫、水害、土砂災害を防ぐため、上流に位置する地域の活動がどうしても必要です。

我々の業務の中には「何でも屋さん事業」が含まれています。要は、マンパワーが必要な場合は阿武隈クラブを使ってくださいという事業です。ブドウの選定作業や土盛り、草刈り等の作業を行い、村の維持に尽力しています。また、移住にかかわる情報も現場目線で行います。実際の移住者が阿武隈クラブには多数いますので現場のリアルをお伝えすることができます。

 村づくりという言葉は非常に抽象的だなと地方に来て改めて感じます。阿武隈クラブでも様々な取り組みを試みていますが、維持をしなくてはいけないもの、新しく始めること、必須なものと過剰なもの。これらを含めた言葉が村づくりという言葉で形容されているのかもしれません。地方移住は自分の力を発揮したいと思っている人にはベストな選択で、過疎地においてはそういった人材を欲しているのは間違いないでしょう。

地方の課題は社会問題であり、日本のみならず世界中で少子高齢化や過疎化の問題があります。福祉の見直しも当然必要で、公助、共助、自助の考え方を反映させていくことが重要です。「村づくり」という抽象的な表現は現代の日本において危機感が少し足りないような表現に思います。課題は多種多様でかつ深刻になります。私たちは能登半島の震災支援を行っていますが、やはり復興にはこういった福祉の視点も必要ですし、社会問題に対する危機感が必要でしょう。地方には一次産業者が多く、かつ高齢であり、マンパワーも足りません。地方にこそもっと戦略的な政策や条例があってもいいと思いますし、そういった見識を持った人間が集まっていくべきでしょう。